ヒストリー・オブ・バイオレンス  


b0093261_16471342.jpg私の中の「3大デヴィッド巨匠」とは、

・デヴィッド・リンチ
・デヴィッド・フィンチャー
・デヴィッド・クローネンバーグ
(別格:デヴィッド・ボウイ 補欠:デヴィッド伊東)

この映画は、3人目のデヴィッドであり、理解に苦しむ気持ち悪い変態ムービーを作らせたら右に出るものはいない鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督の渾身の社会派バイオレンス・ムービーだ。

クローネンバーグ監督の歴史はハリウッドの変態の歴史である。
『裸のランチ』(91)の気持ち悪さは、虫唾が走る系の気持ち悪さで、タイプライターがうにょうにょ動いて、しかもそのタイプライターがホモだったりするから性質(タチ)が悪い。
そしてハリウッドが「なかったことにしたい」映画『クラッシュ』(96)は交通事故によって得られる快感をえんえんと描いていて、ますます理解不能。
この映画を当時映画館まで観にいったあの頃の自分に乾杯だ。


そんな敬愛するクローネンバーグ監督の映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』。
この映画、変態度および気持ち悪い度は控えめである。
デヴィッド・リンチに例えるならば、『ザ・フライ』『裸のランチ』がリンチでいう『イレイザーヘッド』級なら、『ヒストリー~』は『ツイン・ピークス』級である。

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■あらすじ■
アメリカ・インディアナ州の小さな町でダイナーを経営する主人公トム・ストール(ヴィゴ・モーテンセン)。
愛する妻エディ(マリア・ベロ)と息子と娘、家族4人で仲睦まじく平和に暮らしていた。
そんなある日、トムのダイナーに銃を持った強盗が押し入る。
しかしトムは怯まず殺人マシンの如き咄嗟の判断で強盗を殺傷する。
このニュースが流れると、トムは町で一躍時の人となり名は全米に知れ渡る。
そんな父の活躍に沸く家族。
しかしその幸せも長くは続かなかった。
ある一人の男が来店するまでは。
眼に深い傷を負っていてとても堅気に見えないこの男がトムに向かって言った。
「おまえ、ジョーイだよな」。

はい、注目!!この映画は冒頭が肝心。
じりじりと長まわしでみせるこの冒頭、「裏でいったいどんなことが行われているのだろう」と指の隙間からチラチラ見ているような感覚だ。
ありふれた日常のちょっとあやしい男ふたり。
この冒頭があるおかげで、「ただごとではない空気感」が観る側に伝わってくる。

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過去のトム(ジョーイ)と深く関わりのあるふたりの大御所ハゲハリウッドスターがギャング★スターとしてその後登場。
ひとりはエド・ハリス。
謎めいた、でも迫力満点のカール役で登場。
以前トム(ジョーイだけど)に有刺鉄線で片目を潰されている。
もうひとりはウィリアム・ハート。トム(ジョーイだけど)の実の兄でギャング界のボス、リッチー役だ。どうかまばたきをしてください!ってくらい…怖い…渋い…深い…。
オスカー常連のベテランハゲ俳優の登場後、トムの中で眠っていたはずのジョーイが徐々に頭をもたげてくる。
自分の中で封印された謎の男、その秘めた過去を、ひょっとしたらトム自身が一番恐れ、そしてどこかで待ち望んでいたのかもしれない。
殺人シーンでのトムの動き、瞳の色、あまりに俊敏に、正確に動く体は紛れもなく昔の自分であるジョーイであった。

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そうか、クローネンバーグ監督に銃社会や暴力を描かせると、こういう映画になるんだ、と納得。
クローネンバーグ監督独特のグロさもあり、そしてリアリティーありありのラスト。
過去の自分との決着、それと引きかえに崩壊してしまった家族。
それでも傷つき帰ったトムを受け入れようとする息子と娘…。
そしてなんともいえない妻の表情。
このシーンには心救われた。

「ヒストリー・オブ・バイオレンス」
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by fonda127 | 2006-12-13 23:10 | 映画 ▲Top
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